月より降りてくる香り

{9685EB12-0AB1-420B-89AA-3C5ACE4FDF6B:01}



今夜は十五夜、中秋の名月ですね。
中国では中秋節はかなり大きなイベントで、会社は午後から翌日まで休みだそうです。
先月訪れた香港でも、もう中秋節のための提灯がたくさん飾られ、月餅商戦が繰り広げられていました。

{93276969-A49F-4E78-A20F-6AEDFFA185B1:01}
金鐘のショッピングセンター、太平商場にて


{F6921AB1-8EEE-4C75-A0EC-26F566FF069E:01}
昼なのでわかりにくいですが、動物たちは提灯です

{E3D50FCE-6246-4030-9CE2-F7668EA70E50:01}
提灯店


中国の月の話といえば、嫦娥(じょうが)伝説です。
羿という弓の名手がいて、嫦娥はその妻でした。
昔、太陽は上帝の息子の十人兄弟で、毎日交代で昇っていました。(陰陽五行学の十干のことです)
ところがあるとき、兄弟たちが皆揃って昇ってしまったので、地は灼熱となり、人はみな困ってしまいました。
上帝の命を受けた羿は、なんと9つの太陽を脅すだけなく射殺してしまいます。
上帝は怒り、羿とその妻の嫦娥の神籍を剥奪し、人間界に落とします。
つまり羿と嫦娥は、不老不死ではなくなってしまったのです。

不老不死に戻りたい羿は、西王母を訪ね、自分と嫦娥のために不老不死の丸薬を二粒もらってきます。
これは一粒飲めば不老不死になり、二粒飲めば神になり昇天できるというものでした。
羿は嫦娥と一粒ずつ飲むつもりだったのですが、欲の出た嫦娥はこっそり二粒飲んでしまいました。
そしてひとりで天へと昇っていきました。

ところが途中で嫦娥は、自分ひとりが神界へ帰るとその非情さをなじられるのではないかと心配になってきました。
そして天と地の間、月に奔り(「嫦娥奔月」)、ひとり寂しく月の廣寒宮に住むこととなったのでした。

雲母の屏風 燭影深し
長河漸く落ち暁星沈む
嫦娥まさに悔ゆべし靈薬をぬすむを
碧海  青天  夜夜の心  (李商隠)

嫦娥は罰を受けてヒキガエルの姿になったとも言われます。
また、羿は嫦娥の去ったことを嘆き、満月の晩に団子を月に捧げて嫦娥の名を三度呼ぶと、嫦娥は戻ってきたという説もあります。

ところで、「羿を殺すものはこれ逢蒙なり」という言葉があります。
羿の一番弟子は逢蒙といいました。
逢蒙は弓の技をすべて会得すると、羿さえいなければ自分が一番だと思うようになり、あろうことか師の羿を射てしまいます、、、

羿と嫦娥の物語、なんだか感慨深いものがあると思います。
中国神話もなかなか面白いものです。

さて、中国では月には金木犀が生えていると言われており、金木犀の香りは「月より降りてくる」といわれています。
金木犀は「桂花」ですが、古くは「肉桂」と言われたようです。
武夷岩茶の「肉桂」は金木犀のことであり、金木犀のような華やかな香りがするのが特徴です。
冒頭の写真はその「肉桂」、しかも唯一「極品」と冠することを許された、我らが劉宝順さん製のものです。
(容れ物は劉さんの「幔亭」限定もので、先日の闘茶会で頂きました。)
今宵は雨ですが、これと香港土産の月餅を愉しみながら、嫦娥と亡き母に思いを馳せようと思います。

月みれば千々にものこそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど  (大江千里)

(私事ですが、明日は奇しくも母の命日で、ふと深夜に病院に呼び出されたことを思いだしました。また、竹取物語の研究などでは、月は冥界の象徴だと言われています。
受け継いだこの命をしっかり輝かせて、生きていこうと思います。)


明後日の定期演奏会には、まだ満月パワーが残っているでしょう。
簡単な淹れ方でになりますが、この「極品肉桂」、特別にお出ししようかと思いつきました。
10日の13:30より、大井町きゅりあん7階のリハーサル室にて開催いたします。


お読みいただきどうもありがとうございました。
皆さまも素敵な十五夜を過ごされますように。